野沢尚氏の『深紅』を読んで…
正直申し上げて、誠に不快でございました♪
久方振りにミステリー小説なぞを読んでみました。野沢 尚氏の『深紅』。約三日間で読了したのですから、私としてはスピード記録の部類に入ります。けれどもそれは、余りの面白さ故…ではございませんでした。残念ながら。不快なモヤモヤを取り払いたいという一心で、速読してしまいましたに過ぎません。先ずは物語の概略をば…
| 父と母、幼い二人の弟の遺体は顔を砕かれていた。秋葉家を襲った一家惨殺事件。修学旅行でひとり生き残った奏子は、癒しがたい傷を負ったまま大学生に成長する。父に恨みを抱きハンマーを振るった加害者にも同じ年の娘がいたことを知る。正体を隠し、奏子は彼女に会うが!?(背表紙より) |
忌まわしい一家殺人、生き残ってしまったことに罪悪感を抱き続けられる奏子嬢、そして殺人鬼の娘様…御期待をそそりまくります、モチーフ揃いでしょう?ですのに、この御本が充たしてくれましたのは、秋葉家を襲った加害者・都築則夫殿の上申書に克明に記されております、平凡で生真面目な一サラリーマンが、如何にして人様を四人も殺めてしまう結果に至りましたのか?という、疑問に対します満足度だけ。たった一章分のこの上申書を拝読しましただけでも、都築則夫殿というお方の深層心理に対しましては、甚く惹かれますものがございます。けれども悲しい哉、彼は主役ではございませんでした。
主役は秋葉家唯お一人の生き残りでいらっしゃいます、奏子嬢。今流に申しませば、事件後から凄まじいPTSDに苦しまれておられます彼女も、実に興味深い人物様でいらっしゃるはずですが…如何せん、小学校の修学旅行中に御家族の訃報を知らされましてから、第三章では一気に女子大生へと成長されてしまわれますもので然程、感情移入が出来ませんでした。彼女は心底からは何方様にもお心を開かれません、生ける屍のような御嬢様で…彼女のような辛い過去を背負われたお方様ならば、致し方無いのでしょうか。と、納得は出来ますものの、実感として奏子嬢の凍てついてしまわれた心情が、如何にも染み込んで参りませんのは何故?
私が奏子嬢のような体験を、幸いにもしましたことがありませんから?私が奏子嬢の悲愴なお気持ちを、想像します能力に欠けていますから?作者様の文章力が足りませんでしたから?自分及び野沢氏を擁護しますつもりはございませんが、その何れでも無いように思えます。理由はもっと単純なこと。私が秋葉奏子嬢というお方様を、全く好きになれなかったからでしょう。同情すら覚えられませんほどに、私は彼女をかなり嫌っていたのです。
大学生になりました奏子嬢は、お友達も彼氏もいらして、将来の希望職種に則したアルバイトまでなさって…少なくとも表面的には、かなり恵まれた状況の最中におられました。が、その一方でお心の中に‘隠れ家’なります秘密のお部屋を抱かれつつ、彼女は常に御家族の事件を反芻しながら生きられますばかり。そんな本心を潜められて、周囲を欺きますことだけには長けていらして。でしたらいっそのこと、他者との御関係を総てお断ちになれば?って、何度も言ってやりたくなってしまいました。
犯罪被害者の遺族様は、恐らくこんな御心境なのでしょうねぇ…と、一瞬でも感じさせてくれますような、リアルっぽい描写なぞがありますと、奏子嬢に対します私の嫌悪は怒りへと変貌。然も有らんかのように見せながら、野沢氏が描かれた犯罪被害者遺族様・奏子嬢の生き様は、何かが違うように思えてなりませんでした。その違和感の正体はつい先程、『深紅』を読み終えましたばかりの私には、情けなくも判然と致しません。でもぉ…
奏子嬢はリビング・デッドなのですもの♪
死体の感情なぞ、生きております私には理解出来ませんのも当然。でしょう?彼女が御家族様を殺した犯人の娘様・未歩嬢と出逢われましてすらも、奏子嬢のお心の複雑な葛藤なぞ感じられませんでした。仕方ございません。実際に奏子嬢御自身も、そのようなものは感じていなかったのですもの。繰り返しますが彼女は鉄壁の不感症女、つまりは亡骸に過ぎませんので…
血塗れの惨劇を彷彿とさせますタイトルにも、些か憤りを抱かずにおれません。確かに秋葉家殺人事件は、これでもかと申されますばかりの血の海でした。でしたが、果たしてその必要がありましたのかしら?派手なスプラッター事件で読み手の好奇心をそそられたいが為に、あそこまでなさったでは?と、勘ぐってしまいます。まぁ…その手に引っ掛ってしまいました、私が批判しますのも何ですけど。
けれども、もし私自身が犯罪被害者の遺族様でしたら、私はこの小説を憎むでしょう。私はこの小説を許さないでしょう。この小説は犯罪が及ぼす遺族への影響という、極めて重大なテーマを扱いながら、全体的に‘ウケ’を狙っていらっしゃるようにしか、幾ら頑張って好意的に解釈しようとしましても、如何しても思えないのですもの。此れまでにも不愉快な気分にさせてくれました御本は数多くございますけれども、そこに新たな一冊が加わりました。私はこの御本を近いうちに古書店へ売却するでしょう。
不幸にも犯罪被害者の遺族様になってしまわれた皆様が、奏子嬢のような廃人になっておられませんことを私は願いたい。総ての犯罪被害者遺族様方に申し訳なく感じつつ、私は『深紅』を手に取りました自分を恥じ入ります。この世の余りにも痛ましい出来事の数々が、単なる娯楽小説のモチーフとして扱われますことを、私は悲しまずにおれません。こんな糞面白くもないログを書かせてくれちゃって…それだけでも、如何にイヤ~な気分になります小説なのか、御理解頂けますでしょ?
--------------------------------------------------------------------------
★このログを読まれまして気に入ってくださいました皆様は…
&
&
をクリック!
斯様にして頂けますれば大いなる励みに存じます♪
--------------------------------------------------------------------------
TrackBack
URL per il TrackBack a questo post:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/80466/4335437
Di seguito i weblog con link a 野沢尚氏の『深紅』を読んで…
正直申し上げて、誠に不快でございました♪:




Commenti