嶽本野ばら様の『鱗姫』と、
この世の乙女達への残酷な宣告
「私、ロマンチストではありませんの」と、英吉利国留学当時に独逸人の殿方のお友達に申し上げましたら、「違うね…君は現実のロマチシズムに幻滅してしまった、途轍もないロマンチストだ」なぞと反論されてしまいまして…
図☆♪
でしたものですから、「違います!違います!違います!」と、意固地になって否定しまくって遣りました。当時の私の美意識に於いて、包み隠さずロマンチックへの憧れを剥き出しになさっておられます婦女子様なぞは、おバカ丸出しも甚だしい全く以って恥知らずな存在でしたので。ロマンチストとは…少女漫画の王子様に恋焦がれておられます処女のお方様ですとか、結婚願望がピークに達しておられながら恋愛経験然程無しの売れ残り女のお方様ですとか、ハーレクィン小説ばかり読みながら空想世界に生きておられます独身女のお方様ですとか、兎に角そうした女人の弱みをあからさまに肯定されていらっしゃるような皆様方のイメージが、何時の間にか心の中に強く根差していたのですもの。私もかつてはそんなお方様のお一人で、抜きん出たロマンスへの欲求を現世で満たせませんでしたが故に、頑なにロマンチストでありますことを否めておりますなぞと、ありましょうことか殿方に御指摘されてしまっては、
No I’m not!No I’m not!No I’m not!×100万回
…せざるを得ません私の何とも惨めな心境も、少しは御理解頂けますでしょ?加えまして御親切にも斯様な御指摘をくださいましたお友達が、「私はロマンチストだ!」なぞと白昼堂々と宣言してしまわれたのですもの。んまぁ!二十代後半の殿方の癖して、よくもそんな台詞を恥ずかしげもなく仰られますこと!それは同じ哲学科の講義を受けに参ります道すがらでのこと。場所はロンドン市内のど真ん中。通行人様方も周囲にはいらしたので…
「そういう青臭い発言を、町中で喚き散らすのはよさんかい!」
「何故だ?私はロマンチストであることを恥じてはいないよ!」
「テメェが恥ずかしくなくても、ワシは恥ずかしいんじゃい!」
「ロマンチストであることを隠している君の方が恥ずかしい!」
「だったら、デカイ声で世間様にその事実を曝すんじゃない!」
「ほ~ら、ね!やっぱり君は、ロマンチストなんじゃないか!」
「黙らんかい!シャ~ラップ!シャ~ラップ!シャ~ラップ!」
御覧の通り彼と私は、実に仲の良いお友達同士でございましたのよ♪おほほほほ!こんな遣り取りをかつて致しましたことを、嶽本野ばら様の『鱗姫』を読了しましてから想い出しました。『鱗姫』は強いてジャンル分けしますなら、幻想文学に入りますかと存じます。物語は全身を徐々に鱗で覆われてしまいます忌まわしき奇病を、遺伝的に受け継いでしまわれた美少女・楼子嬢の悲劇…で?って、実はそれだけのお話でしたりしますのよね。前半は楼子嬢が如何にお肌の美容に拘っていらしたかが、克明に御自身様によって語られます。楼子嬢が外出されます折には片時も日傘を手放さないくらい紫外線対策に熱心でいらした結果、彼女は陶器のように白く透けます美肌に恵まれておられました。如かして『鱗姫』というタイトルを前提に、楼子嬢が御自身様の美肌が損なわれますことへの耐え難き恐怖を語られます段階まで読み進められませば、読者の何方様もが彼女を待ち受けます残酷な宿命を予感してしまわれましょう。
お前はきっと、醜くなるぅ~!
と、御本人様も自覚しておられますように高飛車で傲慢な大金持の娘さんであります楼子嬢に、読み手の皆様方はそんな不吉なお言葉を、呪文のように唱えて差し上げたくなってしまいますでしょ?可哀想に…だなんてお気持なぞ、微塵も抱けませんでしょ?何てったって楼子嬢は美&金なります、世の数多の婦女子様方が咽喉から手が出ましょうほどに求めて止みません、正しく女人の欲しますところの総てを、生まれながらにしてゲットされておられる資産家美人令嬢ですもの。何方様とて楼子嬢には、同情なぞしてくれますまい。
けれども、何故か憎めません楼子嬢♪
それは偏に彼女の高慢チキな御嬢様振りが、笑いを誘ってくださいますほどにユーモラスだからでございましょう。鱗がお身体に生え始めてしまいましても、全身を鱗に覆われました化物同然の鱗病重症患者様方を御覧になられましても、一転二転の末に彼女を執拗にストーキングしていらした謎の刑事殿を殺めてしまわれましても、楼子嬢はコメディエンヌ顔負けの天然ボケ的なキャラを貫いておられました。此れぞ温室育ちの世間知らず御嬢様ならではの離れ技。断じてお御足を地に着けられませんのが楼子嬢。それでいて高校生風情の癖に、妙に腰だけは据わっておられますので…全身を Vivienne Westwood で包んで瀟洒な日傘を差しながら、空気椅子状態でも不思議と優雅に宙に浮遊していらっしゃいますような、このおぞましい物語には相応しからぬヒロイン様に思えてしまうのです。そんな楼子嬢が一人称で語って聞かせてくださいますもので、『鱗姫』は梅図かずお風なホラーでありながら、お伽話を彷彿とさせます淡々とした夢見心地なテンポにて御展開。楼子嬢が余りにも絵に描いたような御嬢様でいらっしゃいますせいでお話自体も、
絵空事のように思えてしまいますのよ♪
けれども、悪い意味でではございません。実に嘘っぽい楼子嬢の存在が軸となって、リアルでグロテスクな作中の要素をも、シュールでロマネスクな事物へと転換してくださるのですもの。勿論お蔭様で、『鱗姫』は一寸も怖ろしくなぞございませんが。それでも楼子嬢の運命や如何に?と、多分に彼女の思われるツボにまんまと嵌まってしまっては、最後まで最後を期待させてくださいましたこの物語。の、最後は?と尋ねられませば、詳しくは述べますまいと念じながらも、私はお答えせずにおられません。楼子嬢はラストで少々突拍子も無く、彼女に欠けておられました唯一にして至上の悦びを確と手中に収められてしまいます。美貌にもお金にも何ら不足していない楼子嬢に無かったその悦びとは、申し上げますまでもございません…
想い想われの、ラブラブなロマンス♪
に、他なりません。果ては人間魚になってしまわれます、治療法無き皮膚病がテーマでありますこのストーリーに、色恋沙汰が介入出来ます隙なぞありますの?楼子嬢を鱗病から救い出されます、薔薇の花背負ったヒーロー様なぞ御登場なさいます兆しは無かったはず。でしたが、不治の病に悲恋はやはり付き物なのでしょうか?最後も最後、本当の最後で楼子嬢は鱗病に侵されつつあります深刻な御事態をも忘れ去られましょうほどの、恋が実られました幸福感を御満喫なさるのです。けれども鱗病は、セックスによって感染致しますとか…楼子嬢はその事実を百も御承知。の上で、愛しい殿方様から肉体関係を迫られてしまいます。楼子嬢よ、如何なさいますおつもり?御自身様の御病状&その伝染性を把握しておられながらの性交渉は、はっきり言って犯罪でしてよ!と、つい現実主義に思考が向いてしまいます、(自称)恋愛嫌いな私。ですが、本当は…
崖っぷち状態でのロマンスなら…大好き♪
でしたり致します。例えば…未来からタイム・ワープして来られました‘殺人機’(通称:シュワちゃん)と戦われます、ヒロイン様&ヒーロー様がその渦中に於いて暢気にエッチされますとか。そうしたピンチ的状況下での取って付けられましたような恋愛でしたら、‘嗚呼、お素敵ざますわ~ん!’と冬ソナ好きのオバ様方のような反応を、健全かつ正常な婦女子様方の一員として示しましてよ。恋愛の恋愛による恋愛の為の恋愛モノは拒絶せずにいられませんが、他にお命が係わりますような大事を控えておられます最中でのロマンスには、少なからず弱い女なのでございます。何故?さぁ…私自身のそうした趣味と傾向につきましては、明確な解釈が見出せずにおりますの。それでも兎に角、断崖絶壁みたいな舞台背景がございませんことには、燃えもしなければ萌えも致しません。
そんな私に、『鱗姫』はピ~ッタリ!
でしたような、そうではございませんような…美貌を剥奪されますことは、乙女にとりましては死も同然。楼子嬢は間違い無く窮地に陥られておりましょう。楼子様の恋のお相手様とて、それ相応の勇敢な御活躍をなさっていますし。お二人様は実は愛し合いますことが許されません、禁断の仲でさえあったりしまして。私がロマンチシズムを享受しますには充分過ぎますほどの設定なのですが。やはり、おられませんのよ…笑わずに♪
おほほほほほ!(←即実行)
『鱗姫』は楼子嬢とお相手様の禁じられた愛を否が応でも読者に許容させんとして、女にとりましては癌よりも空恐ろしき架空の鱗病なります代物を、わざわざ御丁寧にお誂えくださいましたように思えてしまいます。それどころか、この鱗病がございませんでしたら、楼子嬢の秘められました恋心は、現実に花開かれますことなど無かったのかも知れません。或いは鱗に覆われつつある御自身様の醜い裸体を曝け出さねば、王子様と結ばれないという究極の選択を楼子嬢に課されますのが、このお伽話のメイン・テーマでしたのでしょうか?嗚呼、そんな気が致します…然らば鱗病を発病されましたことよりも、ストーカー刑事殿を殺害されましたことよりも、楼子嬢にとっては恋愛そのものが絶体絶命!お相手様と相思相愛でありますことが発覚しましてのお喜びも束の間、次いで羞恥と愛欲の葛藤が彼女を待ち受けていたのです。利己主義の塊のような楼子嬢のことですから、お相手様との生さぬ御関係ですとか、お相手様に鱗病を伝染させてしまいます可能性ですとか…そんな倫理道徳上の問題なぞは、軽く乗り越えてしまわれましょう。けれども既に鱗に覆われてしまっている御自身様の醜悪な恥部を、最も見られたくないお相手様に見せますことは、楼子嬢のようなお方様には身を裂かれます想いでございましょう。この一点に於いて、
『鱗姫』は世にも残酷なお伽話…
けれどもそれは、実に有り触れた残酷さでもございます。鱗なぞ生えておらずとも、愛する殿方にお身体を開かれますか否かは、乙女達にとって斯くも辛い決断でもありますもので。好きなお相手様ですからこそ、恥ずかしい。嫌いなお相手様でしたら単に、汚らわしい…どっちに致しましても殿方の皆様のように、婦女子は性に対して単純構造な神経を持ち合せてはおりませんもので。未だ処女でいらっしゃる世の乙女様方への、『鱗姫』は恋の行く末にございます苛酷な現実を宣告しました予言の書。皆様を待ち受けております運命は、甘ったるいばかりのものではございません。それ故、初めての性交に於いては必要となるのです。鱗病であれ何であれ…
切羽詰りましたロマンスが♪
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◎今回のログに関連で御紹介したいサイト&ログ:
・「『エミリー』 読後直後感想文;この残酷な世界に…」
・NOVARA BOX;嶽本野ばら様公式サイト
・まっしろな気持ち様の:「鱗姫」
・sound vision.様の:「鱗姫(小説)読む。」
・しおりにあいたくて様の:「鱗姫」
・Auto Negotiations様の:「鱗姫」
・PERFECT CRIME様の:「鱗姫/嶽本野ばら」
・観察日記様の:「ウフフフ。」
・青、あお、白様の:「鱗姫」
・自己中本斬り(仮)様の:「鱗姫/嶽本野ばら」
・にいなのぶっくろく様の:「嶽本野ばら『鱗姫』」
・黄桜の好物様の:「鱗姫【嶽本野ばら】小学館」
・i lost sight of you in the crowd.様の:「[読む]小説/読了」
・ほわほわ・ぽれぽれ様の:「『鱗姫』」
・ごった煮読書メモ様の:「鱗姫/嶽本野ばら」
・Be Airy...様の:「鱗姫 嶽本野ばら著」
・青、あお、白様の:「鱗姫」
・軽薄生活レポート(仮)様の:「『鱗姫』 嶽本野ばら」
・22℃様の:「鱗姫」
・日々妄想様の:「■鱗姫 」
・CHOCOLAT DIARY様の:「鱗姫」
・*untitled message*annexe様の:「鱗姫」
・愛ト殺戮ノ読書日記。様の:「■ [嶽本野ばら] 鱗姫」
・読書記録様の:「鱗姫」
・Leoniden様の:「鱗姫 嶽本野ばら」
・ミラーカ * 雅日記 *様の:「鱗姫/嶽本野ばら」
・今日のイタイコ様の:「「鱗姫」読みました。」
・陽が沈むころに様の:「[Book]鱗姫 」
・あさあさ☆読書・映画日記様の:「【鱗姫】嶽本 野ばら(著)」
・melasse monarchie様の:「鱗姫{ 文庫版 }」
・真魚の修行日誌様の:「血と禁忌」
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この世の乙女達への残酷な宣告:
» 鱗姫/嶽本 野ばら [本、演劇、音楽、美術etc … ミラーカ * 雅日記 *]
江戸川乱歩の「黒蜥蜴」のようなタイトルに惹かれて購入した一冊。
「紫外線の滝にうたれているよな夏の期間、
日傘をさしていない女のコは馬鹿です。
うつけです。磔の上、獄門の刑に処されるべきです。」
という奇跡的な美肌と美貌をもつ龍烏家の長女・楼子。
その楼子が奇病にかかり、それを治す方法が…!
というストーリーでございます。
途中でエリザベート・バートリー
(「鋼鉄の処女」という無数の針のある棺... [Continua a leggere]
Registrato in data giu 15, 2005 a 13:43
» 週刊書評 ::: 鱗姫 [Kuchinashi Blog]
嶽本野ばら『鱗姫』(小学館)[bitway][amazon]
生血もとむ、私は鱗の姫君
この、現代日本の人魚姫ファンタジー『鱗姫』は、禍々しくもデカダンスなホラー小説です。古来、人魚、そして竜や蛇といった、鱗を持つ女の伝承は、セクシュアルかつ邪悪なものとして語られてきました。つまり、“鱗姫”の系譜においては、ロマンチックで可憐なアンデルセン童話の人魚姫の方が、よほど異質な存在なのです。
主人公は、龍鳥楼子(たつお・たかこ)17歳、京都のお金持ちの名家で生まれ育ち、私立... [Continua a leggere]
Registrato in data lug 02, 2005 a 13:07


Commenti
はじめまして。
TB ありがとうございました m(_ _)m
ブクログに登録されてるんですね。
私も以前作りましたが、
途中で投げ出してそのまんま・・・。
なぜなら好きな本のほとんどがamazonに画像がない上に、
一番登録したかった本は絶版でデータベースにもないという(^ ^ゞ
本を読もうと思いつつ、手に取るのはマンガばかりという状況なので、
たくさんの本を読んでらっしゃる岡本さんはすごいの一言に尽きます。
Scritto da: nigi | mag 18, 2005 a 15:36
ごめんなさいっ
お名前間違えちゃいましたっ
岡本さんではなく岡枝さんですね。
大変失礼いたしました…orz
Scritto da: nigi | mag 18, 2005 a 15:39
御訪問&コメント、有難うですぅ♪私は野ばら様の作品を読みます度にログで取り上げておりますが、今回の『鱗姫』は他にも大勢のお方様がログで取り上げていらして、正直なところびっくり!でした。
‘なぜなら好きな本のほとんどがamazonに画像がない上に、一番登録したかった本は絶版でデータベースにもないという(^ ^ゞ’
↑私もこうした状況にはウンザリしています。ブログでアソシエイトになる理由なんて、やっぱり画像が欲しいからですものね?Amazonは本当にそのあたりがいい加減で…反省して欲しいです!
‘本を読もうと思いつつ、手に取るのはマンガばかりという状況なので、たくさんの本を読んでらっしゃる岡本さんはすごいの一言に尽きます。’
↑とんでもございません。私も漫画はたくさん読んでおりましてよ。それに比べて一般書籍を読みます速度が極端に遅いもので、私の読書量など大したことはありません。
どちらかと申しますと、映画がメインのブログですが、また気が向かれましたら是非、遊びにいらしてくださいね♪では、また!
Scritto da: 岡枝 to nigi様 | mag 19, 2005 a 06:22
トラックバック有難う御座いました
随分前になりますがTB、有難う御座いました。
やり方が分からず、時間がかかってしまいました。
今後とも宜しくお願いします
★「弐拾参拾四拾」
6/23渋谷chelsea hotelにて1stライブをやります。
CDも同時発売します!
HPも出来ましたので是非、見て下さい♪
Scritto da: ミラーカ | giu 15, 2005 a 13:44
御訪問&コメント、誠に有難うございます。TBは勝手に送りつけます不躾な代物でもありますので、どうぞお気兼ねなさらないでください。また、ライブを開催されますとのこと…おめでとうございます♪CDも発売とは、スゴイ!若いっていいですねぇ…蔭ながら応援させて頂きます。今後ともどうぞ宜しくお願い致します♪
Scritto da: 岡枝 to ミラーカ様 | giu 16, 2005 a 02:28