本当は美しい野ばら様童話;
絵本『うろこひめ』の独断&偏見による一考察
嶽本野ばら様と漫画家兼イラストレーターの高橋真琴様とのコラボレーションによります、『うろこひめ』を読了致しました。先日、野ばら様の小説『鱗姫』については既にログで取り上げましたが、今回の『うろこひめ』は設定もストーリーも全く異なります内容で。更に此方は小説と申しますよりは、明らかに絵本。難しい漢字には全て、フリガナが付いてまでいるのです。からには、お子様向け?確かにお子様にも読めますように配慮されておりますし、高橋真琴様の美しいお姫様のイラストで飾られている表紙を見ませば、小学生くらいまでの少女達は手に取らずにはおられないでしょう。
如かして物語は至って残酷なもの♪
さすがは、野ばら様!高橋真琴様の見目麗しき挿絵に反して、お話の内容はことごとく陰惨の限りを尽くされちゃって…おほほほほほ!この御本の乙女チックな表装だけに誘われて、読まれましては恐るべき内容に度肝を抜かれましたでしょう、野ばら様をよく御存知無いお方様の様子を想像しますだけで愉快ですわ!などと、実に意地悪な欲求まで満たしてくれましたこの絵本は、それでも誠に正統派なります童話そのもの…
とある王国に双子のお姫様が誕生しますところから、物語は始まります。如何にもフェアリー・テールっぽい、オープニングでしょ?二人のお姫様は一卵性では無くて、二卵性双生児のようでした。何故ならお一人は輝くような美貌の持ち主でありましたのに、もうお一人はまるで正反対の醜悪な赤子様でしたので。お二人の御両親様でいらっしゃる王様&女王様は、美しいお姫様だけしか誕生されなかったことにして、醜い方のお姫様をお城の一室に幽閉してしまいます。何て酷い御両親様でしょう!現代でしたら幼児虐待でお縄になりますこと間違い無しでしてよ!
如かして斯様な王様&女王様の悪事がバレますことなぞ無いまま、年月は過ぎて美しいお姫様は一層美しい娘さんへと御成長あそばされました。幼き頃から蝶よ花よと愛でられながらお育ちになりましたので性格も素直で優しく、文句の付けどころが全くございませんお姫様。の御結婚相手を決めます為に、各国の王子様を招かれた盛大なパーティが催されることになりました。のに、その数日前に当のお姫様が突然死!何故に死んでしまったかについては、余りにも理由が間抜けなので敢えて記しませんが…
王様&王女様は慌てふためきました。お姫様が亡くなられた悲しみ故…では、ございません♪何せガキがブスだってだけで、その存在すらも否定してしまいますような、そんな程度の御両親様方ですもの。彼らは予定していたパーティを今更中止なぞ出来ない!と、そんなくだらない体裁に捉われていらしたので。お抱えの魔術師を呼び寄せてはお姫様を生き返らせるよう命令されましたが…それは、一寸♪でぇ~きない~相談ねぇ~♪と、あっさり断られてしまいました。けれども魔術師は幽閉されていた醜いお姫様を、他界された美しいお姫様そっくりに変身させたのです。が、それは飽くまでマ・ヤ・カ・シ!に過ぎませんでしたので、醜いお姫様は美しいお姫様の姿を保つ為に、六日に一度は人様を殺してその生血を飲まねばならないのでした…いや~ん!何てスプラッタ、なんざんしょ?
けれども、王様&王女様は大喜び。お見合いパーティも無事に行われ、お姫様は数多の旦那様候補の中から最もハンサムな王子様との御結婚を決められました。が、しかし!新婚初夜にハンサムな王子様は、お姫様の背中に蛇のような鱗が生えていることを発見してしまったのです。醜いお姫様を美しいお姫様の姿に変えられます魔法をかけた際に、魔術師が蛇を生贄にしたが故の後遺症でした。ハンサムな王子様は恐れ慄いて、そんな姿であると知っていたら結婚なぞしなかったと憤慨。‘お姫様と結婚出来るなら、どんなことでも我慢出来る’と、宣言していた誓いを破ってしまったのです。
ので、お姫様もキレてしまわれてハンサムな王子様を殺して生血を飲んで遣りました。王様&王女様はこの事実をも直隠しになさって、お姫様に新しい婿殿を充てがいました。今度はルックスよりも強靭な神経を重視して、選ばれましたのは勇敢な王子様。でしたが…お姫様の背中の鱗には動じなかったものの、彼女が人殺しの吸血女だと知るや、正義感溢れる勇敢な王子様もまた、お姫様への愛の誓いを破ってしまわれました。
ので、例によって例の如く…勇敢な王子様も殺されましては人間ジュースに♪王様&王女様は遂に困り果てました。こんな猟奇的なお姫様を愛せる王子様など、世界中を探してもいないのでは?と悩まれました末に、何処ぞの王子様でなくとも宜しいと御結婚相手の応募資格を広げて再度、お姫様の旦那様募集を行ったのです。が、何処からどのように漏れましたのか?お姫様の背中には鱗が生えていて、食人鬼だとの噂が既に広まっていたのです。ので、何方様も彼女の夫君にならんとして名乗りを上げてはくれませんでした。
と、そこへ謎の修道士が登場!彼はお姫様の正体を全て承知の上で、神様から彼女を救うようにとお告げを受けられて結婚を望まれたのでした。と申します訳で、お二人は目出度く御夫婦に。嗚呼、メデタシメデタシ!と、思いましたのも束の間。修道士は美しい容姿を保つ為に人殺しを続けるお姫様に言いました、‘醜い姿に戻ってもいいでありませんか。それよりも人を殺し続けて、お心まで醜くなってしまうお姫様を私は愛せません’、と。そろそろ、禁句♪と思っておりましたら、予想通りの御発言が。お姫様は美貌を維持なさる為でしたら、今後も幾らでも殺人を繰り返されると言われては、手始めに修道士で即実行♪天晴れ、お姫様!説教臭い旦那なんて、お呼びじゃございませんものね!
こうしてお姫様は、再びシングルになってしまいました。此処で物語りは終ってしまいますの?いえいえ、そんなことはございません。お姫様は最終的に理想の旦那様をゲットされまして、童話のお約束でございましょうハッピー・エンディングが用意されておりましてよ。けれどもそのお相手は、野性の狼。それは仲間のほとんどが生活の安定を求めて人間に平伏しては‘犬’と化してしまい、今やたった10匹しか配下を従えていない狼達の王でした。そして狼の王はお姫様に言われたのです…
‘身体に鱗があろうと、人を食べようと、どんなに罪深かろうとそれは、お姫様を美しくする為に必要なもの。(…中略…)私はお姫様が美しくあり続ける為に幾らでも、人を森で噛み殺し、その肉を差し上げましょう’
お姫様はそのお言葉に甚く感動なさって、‘気高く強き獣の王よ、如何かこの私と結婚してください’と、自ら狼の王にお願いなさったのでした。斯くして新カップル誕生!世間体に敏感な王様&王女様は最早、‘誰でもいい’というような御心境でしたのでしょうか?お姫様と狼の王の御結婚には反対なさりませんでした。往き遅れの年増娘を持つ御両親様の心境なんて…まぁ、こんなもんざんしょ?おほほほほほ!経験者(=私)が語ってしまいましてよ♪
さて、この絵本版『うろこひめ』…実に奥深い傑作でございましょう?世界各国の童話がそうでありますように、この作品も上辺の筋書きの裏のまた裏側に、憂世の非情な現実が描かれているのですもの。先ずは主人公…美しく生まれたお姫様と醜く生まれたお姫様は、お二人を以ってして実は一人の少女の象徴ですかと存じます。可愛がられて育ちましたお心も清らかなお姫様が十代半ばで死んでしまわれて、姿も御心も醜いお姫様が彼女の後釜にすわりましたのは、成長に連れて現実に毒されずにはおられません、人間様の悲しき性を表現しているようで。何方様とて幼心に描いていらした夢物語のような幻の中に、何時までも御身を置かれますことは不可能なのでございます。醜いお姫様は御誕生と同時に御両親様から見放された、トラウマ満載の一生をそれまで送られていらした訳で、彼女が美しいお姫様と違ってお心も歪んでしまっていらしたのは当然のこと。此れは童話故の極端な例ですが、御両親様のお仕打ちによって何らかの心的外傷を作ってしまわれたお方様は、この世に五万といらっしゃいますはず。この物語の王様&王女様ほど非道くは無くとも、御両親様という存在はお子様を知らずのうちに苦しめてしまいがち…此れ即ち、定説でしょ?おほほほほほ!一時は一世を風靡しましたフレーズが、懐かしく思われましてよね?
次に問題となりますのが、美しく変貌なさいました醜いお姫様の色恋沙汰です。最初に選ばれました旦那様がハンサムな王子様とは、如何にも世間知らずなうら若き乙女様方に有りがちな展開ではございませんこと?加えまして初夜での性交を拒否なさいますお姫様の態度なぞも、恋に恋してセックスを汚らわしく思われます処女の心理を彷彿とさせてくれます。そのように清純で恥らいのあります娘さんですと、お姫様のキャラを美化していらしたハンサムな王子様はけれども、彼女の背中の鱗を悍ましいものと受けとめてしまわれました。世間知らずでいらしたのは、お姫様よりもハンサムなこの王子様だったのです。彼はお姫様を身勝手にも理想化していたのでしょう。此れって現世でも、殿方にはよく見られます傾向でしてよ。でも、背中の鱗くらい我慢出来ませんの?他の部分は何処も彼処も絶世の美女たらん御容姿なんですし…と考えませば、お姫様の鱗は違った何かを具象化したものなのでは?と、思わずにはおられません。はて、その何かとは?殿方を震え上がらせてしまいますほどの、女の何か…勿論、様々な解釈が付けられましょう。けれども私自身は、お姫様の鱗の感触が‘ヌルヌル’と書かれていましたことから、此の何かを女人の秘められましたる性欲ではないかと思いました。純潔だと思っていたお姫様が実は類稀なるニンフォマニアと露見しまして、ハンサムな王子様は失望なさると同時に、セックスをリードせんとしていらした男性としてのプライドが粉々になってしまったのでは?性に関しては常に御自身様が上手でなければ気が済まない…そんな殿方も大勢いらっしゃるのでしょう。少女達を監禁・飼育することでしか情欲を満たせない、変態犯罪者殿までおられるくらいですものねぇ?
お姫様はこの経験から少しだけ大人になられましたのか、次の旦那様は見てくれよりも中味で選ばれました。こんな展開にお心当たりのございます婦女子の皆様も、決して少なくはないでしょう。基本的には正しい選択方法かと存じますが…御自身様の主義主張に捉われて、相手の女性の価値観を認めてくださらない殿方の典型とでも申すべきが、勇敢な王子様だったのです。勇敢な王子様は裏を返しませば、勇敢な征服者。正義感という名のもとに、お相手様の御事情なぞ全く受け付けずに、非難や糾弾をなさいますのが彼には至上の快楽なのでしょう。如かしてそれは彼の理解力の限界を、露わにされます行為に他ならないのです。醜く生まれましたせいで、それまでに散々な辛酸を舐めさせられていらした可哀想なお姫様が、人様を殺めてまでも美しさを失いたくないという致し方無き御心情。を、察してあげられない勇敢な王子様は、私に言わせませば…単なるバカ!女の物事に対します優先順位を見下している殿方なぞ、卑劣極まりない差別主義者でしてよ。おほほほほほ!とっとと殺してくださって、爽快でございましたわ♪
マッチョなばかりで脳味噌はネズミ級の勇敢な王子様の後に、お姫様が修道士と御結婚されましたのは頷けます成り行きでした。理解の無い殿方にウンザリしましたからこそ、理解の有ります殿方に走られましたのですもの。宗教者…何人をも見捨てられません、懐が深い聖人君子様そうした職業の殿方に女が心惹かれますのも然程、珍しくは無いでしょう。が、しかし!このような殿方には、意外な欠点があったりするのです。それは御自身様が…否、御自身様でこそ!御自身様にしか、罪深き御婦人様を救えない!だから、救って見せようじゃないか!みたいな、傲慢さ♪修道士は憐れみこそありましたものの、お姫様に対します愛情はお持ちで無かったのです。多淫症&殺人鬼でいらした有りの侭のお姫様を、修道士は愛して差し上げますお心積もりなど毛頭無く、彼が信ずる正しき道へと彼女を導かれたかっただけ。この三人目の旦那様には、お姫様は当初から認められていなかったのです。修道士が求めていらしたのは、お姫様との師弟関係のようなもの。御自身様と対等な人間様として、彼女を包容してなぞいなかったのです。作中には描写されておりませんが、鱗のことも殺人者でありますことも御承知の上で御結婚してくださったはずの、修道士の本心を知り得ましたお姫様は…途轍もないショックを受けられたことかと、私は想像せずにおられません。御自身様の総てを許容してくださるお方様に、やっと出逢えたかと思いきや、彼は微塵も彼女が彼女自身でありますことを、何一つとして許してなどいなかったのですもの。
最後に狼の王が登場なさいましたのには些か驚きました。何故なら童話の世界に於けます狼は、ヒールとして描かれます場合が多いもので。ですが読み進めますうちに、彼こそが最もお姫様に相応しい殿方でありますことが如実に感じて取れました。狼の王は動物…獣です。ので、彼が生られる上で唯一従っておられますのは、本能以外の何物でも無いかと存じます。お姫様の色情の象徴であります鱗なぞは、狼の王にしてみれば春先に猫が発情しますのと同じくらい当り前な存在でしたのでしょう。お姫様が美貌を守られんとして行われている殺生の数々も、彼女がそうでありたいと望まれます御自身様であり続けんとなさる、必然的な欲求に正直に生きておられる様と狼の王は見極められたのでしょう。楽な暮らしを得んが為に配下達のほとんどが犬へと身を貶めてしまわれた、孤独な狼の王…彼の銀色の眼に映りましたお姫様は、本性と欲望に忠実に生きていらした孤高の女性だったのでしょう。お姫様の眼にも狼の王は同様に映りましたかと存じます。過去の夫君達からも世間からも蔑まれていた、お姫様の性癖や残忍な行為をも彼女の野性の本能と認められた狼の王。失望や批判はおろか、改心を強いることも全くございません。此れぞ、絶対的な真実の愛!有りの侭を有りの侭として受け入れて、有りの侭が故に有りの侭に愛し愛される…人間様には到底至れますまい、自然の掟にのみ従いました本来の番いの在り方が、『うろこひめ』には描かれているのです。それは、申しますならば…
A Marriage made in Heaven、でございましょう♪
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◎今回のログに関連で御紹介したいサイト&ログ:
・「嶽本野ばら様の『鱗姫』と、この世の乙女達への…」
・NOVARA BOX;嶽本野ばら様公式サイト
・*ちび猫ぽりんの散歩道*様の:
「「うろこひめ」嶽本野ばら&高橋真琴。乙女のコラボ。」
・★cafe@porin★様の:
「「うろこひめ」嶽本野ばら(文)高橋真琴(絵)」
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・ピンクの心様の:「高橋真琴先生と野ばらちゃん」
・時々つけまつ毛通信様の:「うろこひめ」
・キオクノキロク様の:
「読書記録⑥嶽本野ばら×高橋真琴『うろこひめ』」
・みどりいろ様の:「うろこひめ」
・Аня*анЯ様の:「初☆」
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・翳りゆく部屋。様の:「キスを、しようとしたのです」
・ノスタルジック奇術團様の:「ひめ。 」
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・トリプトファン様の:「うろこひめ」
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・a book of travels様の:「『うろこひめ』」
・さくらミルク様の:「・・ 高橋真琴の世界 」
・ひなたぼっこでつぶやく様の:「うろこひめ 」
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